慢性腎臓病の紹介とご挨拶
徐々に腎機能が低下していく病態の総称である慢性腎臓病の3大原因は糖尿病・高血圧・慢性腎炎ですが、これら慢性腎臓病の悪化のために維持透析を受けている患者さんは、日本透析医学会の2019年末の統計によると日本全体でおよそ344600人に上り、鳥取県ではおよそ1600人おられます。日本全体で2019年1年間に新規に透析導入となった患者数はおよそ40900人で、一方1年間に亡くなる透析患者さんが34600人ですので、いまだに毎年6000人以上の透析患者さんが増加していることになります。
IgA腎症を始めとした慢性腎炎症候群や血管炎疾患、ネフローゼ症候群といった内科的腎疾患は診断・治療法の進化が目覚ましく、以前は末期腎不全に至り透析導入が必要になる原疾患の中で第1位を占めていましたが、現在は減少して第3位となっています。
透析療法導入が必要になる原疾患の第1位と第2位は糖尿病と高血圧症ですが、これらの疾患に対しても「慢性腎臓病」として治療介入することで残腎機能の保持に長足の進歩が得られていますので、いずれ透析導入を必要とする患者さんは減少に転ずると観測されています。しかし現実には高齢化社会の影響および透析療法の進歩の効果で、維持透析患者さんの増加はまだ続く見込みです。
透析分野での治療法の目覚ましい進化として以下のことがあげられます。一つ目はダイアライザーや透析液の改良が進み、透析効率が著明に改善したことで多種多量の老廃物の除去が可能となったことです。私が透析療法に関わりだした30年以上前の透析患者さんは、貧血も相まって肌の色が黒ずんでいたことを覚えていますが、現在ではそのような一目で透析患者さんと分かるような肌の色をした患者さんは見かけることがなくなりました。
二つ目にはその腎性貧血ですが、1990年にヒトエリスロポエチンが発売されて以降Hb値を10-12g/dLの目標値にコントロールすることがとても容易になり、透析患者さんの生活活動向上に大きく貢献しているものと思います。
三つ目は腎不全合併症である続発性副甲状腺機能亢進症に対する考え方・治療法も大きく進歩したことです。このため、カルシウム・リンのコントロールが易くなり、骨折の減少や異所性石灰化による動脈硬化の悪化抑制が可能となって、透析患者さんの寿命を延ばすことに寄与しているものと考えます。
私は前任の山陰労災病院で主に腎臓内科・透析内科の分野を担当しました。内科的腎疾患の診断・治療を行うと同時に末期腎不全患者さんの透析導入や維持透析に従事し、32年間でおよそ1500名の透析導入や約3000例のシャント造設術・テンコフカテーテル留置術に関わることができました。
谷口病院は透析ベッドを本院39床・分院34床と数多く持つ鳥取県中部地区の透析中核病院ですが、私が今まで培った知識・経験が少しでも役立ち、更なる地域貢献に寄与できるように今後も頑張って行きたいと考えています。
どうぞよろしくお願いいたします。
谷口病院内科 中岡明久